給付付き税額控除導入国の実態|年収の壁と日本導入へのロードマップ

2026年における手取りを増やす給付付き税額控除の全貌を解説するアイキャッチ画像 経済・財政

最近、ニュースで「手取りを増やす」という言葉をよく耳にします。その具体的な方法として注目されているのが「給付付き税額控除」です。

でも、実際に給付付き税額控除の導入国ではどんな風に運用されているのか、自分たちの生活にどう関わるのか、パッとイメージするのは難しいかもしれません。

この記事では、世界の実態や日本での議論の現状、マイナンバーとの関係まで、2026年現在の視点で詳しく整理しました。

SUMMARY■ 本記事の要旨
Point世界の導入事例を網羅
Point所得階層別の支援機能
Point日本の年収の壁対策
Point導入に向けた課題整理
RECOMMENDED■ こんな方におすすめ
各国の運用実態を知りたい
手取り増の仕組みを学びたい
年収の壁の解消策を考えたい

給付付き税額控除の導入国における仕組みと種類

給付付き税額控除は、単なる減税措置を超え、税制社会保障を高度に融合させた政策手法です。世界を見渡すと、多くの国がすでにこの制度を導入し、自国の社会課題に合わせて独自の進化を遂げさせています。

まずはその基本的なメカニズムと、世界でどのように類型化されているのかを詳しく見ていきましょう。

給付付き税額控除の定義と所得階層別の支援機能

税減免と現金給付のハイブリッド構造でこぼれ落ちないセーフティネットの概念図

給付付き税額控除(Refundable Tax Credit: RTC)とは、一言で言えば「税額控除」「現金給付」のハイブリッド制度です。

通常の税額控除は、算出された所得税額から一定額を差し引くものですが、所得が低く税額が控除額を下回る場合、その恩恵を十分に受けられないという弱点がありました。RTCはこの弱点を克服し、控除しきれなかった残額を「給付金」として納税者に直接支給します。

これにより、従来の減税では救いきれなかった低所得者層や非課税世帯に対しても、実効性のある所得移転*1が可能になります。

この制度の挙動は、所得水準によって3つのパターンに分かれます。

第一に、納税額が控除額より多い中・高所得層では、純粋な「減税」として機能し、手取り額が増えます。

第二に、納税額が控除額より少ない低所得層では、まず税金がゼロになり、さらに控除枠の余り分が「現金」として戻ってきます。

そして第三に、そもそも納税義務のない非課税世帯では、控除額の「全額」が現金で給付されるのです。

このように、所得の多寡を問わず一定の支援を保証できる点が、垂直的な公平性*2を保つための大きな鍵となっています。

なお、この仕組みに近い議論として、すべての国民に一定額を支給するベーシックインカムがありますが、それらとの違いについては、こちらの記事ベーシックインカム導入国の結果|幸福の向上とAI時代の働き方の罠で詳しくまとめています。

世帯区分 本来の納税額 税額控除(減税)額 現金給付額 実質的な支援総額
A(所得税10万円) 100,000円 40,000円 0円 40,000円
B(所得税 3万円) 30,000円 30,000円 10,000円 40,000円
C(非課税世帯) 0円 0円 40,000円 40,000円
💡 POINT:包括的な支援給付付き税額控除は、所得が低すぎて減税の恩恵を受けられない層に、直接現金を届けることができる「取りこぼしのない」セーフティネットです。
■ 脚注解説:より深い理解のために
*1 所得移転:政府が税金や社会保険料として徴収した資金を、年金や生活保護、給付金などの形で特定の個人や世帯に再分配し、所得格差を是正する仕組みのこと。
*2 垂直的な公平性:経済的な負担能力が高い人ほど多くの税を負担し、能力の低い人には負担を軽く、あるいは手厚い支援を行うという、税負担における公平性の考え方。

負の所得税からワークフェアへ至る歴史的背景

福祉からワークフェアへの転換および働くことを応援する就労インセンティブ設計の図解

この制度の思想的な源流は、1960年代に経済学者のミルトン・フリードマンらが提唱した「負の所得税(Negative Income Tax)」に遡ります。

当初は非常にリバタリアン*3な発想で、複雑な社会保障制度を一本化し、行政コストを削減する手段として考えられていました。しかし、1970年代から1990年代にかけて、この構想はアメリカやイギリスにおいて「ワークフェア(Workfare:就労を条件とする福祉)」という新しい政策思想と結びつくことになります。

単に生活を保護するだけでは、受給者が労働市場から遠ざかってしまう「依存」の問題が生じかねません。そこで、1990年代のクリントン政権(米)やブレア政権(英)は、この仕組みを働くことを応援する道具へと進化させました。

具体的には、労働所得が増えるにつれて給付額も増える「逓増(ていぞう:段階的に増える)部分」を設計に組み込んだのです。これにより、低賃金労働であっても「働かないよりは働く方が経済的に有利」という状況を作り出しました。

これが、現代における給付付き税額控除のスタンダードな形となっています。自立を促すためのインセンティブ設計*4こそが、この制度の歴史的な到達点と言えるでしょう。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*3 リバタリアン:個人的な自由と市場経済を重視し、国家による介入や規制、過度な福祉を最小限に抑えるべきだと考える政治思想。自由至上主義とも呼ばれる。
*4 インセンティブ設計:人々の意欲や行動を引き出すために、特定の行動(この場合は就労)に対して経済的な報酬やメリットを与える仕組みを、あらかじめ制度内に組み込むこと。

アメリカの勤労税額控除と児童税額控除の運用

貧困削減と労働供給の両立を目指す米国モデルの成果と運用の複雑さを示すイメージ

給付付き税額控除の「先進国」であるアメリカでは、主に2つの大きな柱が運用されています。

一つは、1975年に導入された「勤労税額控除(EITC)」です。

これは低所得の就労世帯を対象としたもので、所得の上昇に合わせて給付額が上がる「逓増期」、最大額を維持する「平坦期」、そして所得増に伴い緩やかに給付を減らす「逓減期」という三段階の構造を持っています。この緻密な設計により、労働供給を阻害することなく貧困削減を実現しています。

もう一つが「児童税額控除(CTC)」です。

こちらは子育て世帯の負担軽減を目的としており、特に近年のパンデミック下では一時的に大幅な拡充が行われ、子供の貧困率を劇的に下げた実績があります。

ただし、アメリカの事例からは課題も見えています。制度が非常に複雑であるため、申告漏れや意図しない過誤支給*5が頻発しており、行政コストの増大や不正受給への疑念が政治的な議論の対象となることも少なくありません。

アメリカのモデルは、その効果の絶大さと同時に、運用の難しさも私たちに教えてくれています。

(出典:国立社会保障・人口問題研究所EITCの就労と貧困削減の効果』)
■ 脚注解説:より深い理解のために
*5 過誤支給:制度の複雑さや事務的な誤り、あるいは申請者の勘違いなどによって、本来受けるべき金額よりも多い、または対象外の人に給付金が支払われてしまうこと。

イギリスのユニバーサルクレジットによる制度統合

イギリスは、複雑化した複数の給付付き税額控除を一つの包括的な制度に統合した「ユニバーサル・クレジット(UC)」の運用で知られています。

かつては児童税額控除(CTC)勤労税額控除(WTC)が個別に存在し、それぞれの制度が重なり合うことで、受給者が就労を増やしても手取りがほとんど増えないという「限界税率*6の高さが深刻な問題となっていました。これを一新し、シンプルな一つの制度にまとめたのがユニバーサル・クレジットです。

この制度を支えているのが、税務当局(HMRC)と社会保障当局がリアルタイムで所得情報を共有する「RTI(Real Time Information)」というシステムです。受給者の月々の所得変動をITシステムが即座に反映し、翌月の給付額を自動で調整します。これにより、常に最適な支援が行われる仕組みを構築しています。

イギリスの事例は、制度の統合とデジタル化がいかに重要であるかを示す、極めて現代的なモデルと言えます。ただし、システムへの過度な依存が、予期せぬエラーによる給付遅延を招くリスクも指摘されています。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*6 限界税率:所得が1単位(例えば1万円)増えたときに、それに対して追加でかかる税金や社会保険料の割合。これが高すぎると、働いても手取りが増えず就労意欲が削がれる。

韓国におけるITインフラを活用した所得捕捉

韓国の成功事例におけるデジタルインフラによる所得の完全捕捉とIT活用の概念

韓国は2008年にアジアで初めて勤労税額控除(EITC)を導入しました。韓国のモデルで特筆すべきは、世界最高水準のデジタルインフラを基盤にしている点です。

国税庁(NTS)の「HomeTax」システムは、企業からの支払調書*7だけでなく、国民のクレジットカードやデビットカードの利用履歴までを高度に捕捉しています。この圧倒的な所得把握能力こそが、正確かつ迅速な給付を可能にしています。

韓国では当初、対象を低所得の勤労世帯に限定していましたが、近年では単身世帯や高齢世帯にも対象を広げ、社会的なセーフティネットとしての厚みを増しています。また、スマートフォンから簡単に申告・確認ができるユーザーインターフェースも整備されており、受給者の利便性が非常に高いことも特徴です。

日本がマイナンバーカードを活用した「プッシュ型給付」を目指す上で、韓国のIT活用事例は最も身近で具体的な成功モデルの一つと言えるでしょう。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*7 支払調書:源泉徴収義務者(企業など)が、誰に対してどのような名目でいくら支払ったかを税務署に報告するための書類。所得把握の基礎データとなる。

カナダやシンガポールの消費税逆進性対策

カナダやシンガポールでは、給付付き税額控除が「消費税の痛み」を和らげる手段として活用されています。

消費税のような間接税は、低所得者ほど収入に対する納税額の割合が高くなる「逆進性*8という問題を抱えています。これに対し、カナダは物品サービス税(GST)の導入に伴い、低所得層に一定額を還付する「GSTクレジット」を導入しました。所得税の確定申告を通じて、支払った消費税相当額を戻す仕組みです。

日本でも消費税の使途については関心が高いですが、その実態についてはこちらの記事消費税はどこにいくのか|輸出還付金の正体と法人税減税に潜む歪みでも詳しく解説しています。

シンガポールも同様に、消費税率の引き上げに際して、現金給付型の控除を運用することで低所得層の購買力を維持しています。

これらの国々が「軽減税率」という複雑な仕組みを採用する代わりに、RTCによる直接給付を選んでいる点は非常に示唆に富んでいます。必要な人に、必要な分だけ現金を戻すという合理的な逆進性対策のあり方が、ここには示されています。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*8 逆進性:所得が低い人ほど、収入に占める税負担の割合が重くなってしまう現象。特に生活必需品への課税が強い消費税などで顕著に現れる。

ドイツの児童手当と税額控除を選択する仕組み

ドイツの制度設計は、非常に緻密で合理的な「選択制」を採用しています。

ドイツでは、子供がいる世帯に対してまず「児童手当(Kindergeld)」として現金が支給されます。しかし、ここからがユニークな点なのですが、年末の所得税確定申告において、税務当局が「現金給付」と「児童控除」のどちらがその世帯にとって有利かを自動的に判定します。

低所得層にとっては現金でもらう「児童手当」の方が恩恵が大きく、高所得層にとっては税額から直接引く「児童控除」の方が節税効果が高くなります。この差額を精算することで、あらゆる所得層に対して最適な支援が行き届くよう工夫されているのです。

給付と控除を対立させるのではなく、一つのシステムの中で補完し合うこの仕組みは、日本がこども家庭庁を中心に行っている支援策を整理する上でも、非常に参考になる高度なモデルです。

低所得者の就労意欲を高めるメリットと効果

労働による手取り逆転の解消および貧困の罠からの脱却を促進する仕組みの解説図

各国の運用実態を総括すると、給付付き税額控除の最大のメリットは「貧困からの脱却」「労働供給の維持」の両立にあります。

従来の生活保護制度の多くは、少しでも働くと給付が大幅にカットされるため、受給者が就労を控えてしまう副作用がありました。しかし、RTCは所得増に応じて給付を緩やかに減らす設計にすることで、「働くことが必ずプラスになる」という安心感を提供します。

また、現金給付は消費性向が高いため、低所得層の購買力を支えることで景気の下支え効果も期待できます。さらに、税務システムを活用して給付を行うことで、社会福祉の窓口に並ぶ必要がなく、受給に伴う心理的な抵抗感(スティグマ*9)を軽減できる点も大きな利点です。

もちろん、これらを実現するには正確な所得把握という技術的な前提が必要ですが、成功すれば「公平」「効率的」な新しい社会契約の形となり得るのです。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*9 スティグマ:特定の属性を持つことに対して社会から押し付けられる「負の烙印」や心理的な屈辱感。福祉の受給に際して生じる恥じらいなどがこれにあたる。

給付付き税額控除の導入国から学ぶ日本の課題

2026年現在、日本でも「手取りを増やす」という言葉が国民的な関心事となり、給付付き税額控除の導入議論は待ったなしの状況です。

しかし、諸外国が直面した課題や、日本特有の行政構造が障壁となっているのも事実です。私たちが直面している具体的な課題を深掘りしてみましょう。

日本の年収の壁を解消するための制度設計

年収の壁をなだらかなスロープへ変え働き控えを防ぐ最新の制度設計イメージ

日本における最大の懸案事項は、いわゆる「年収の壁」です。

103万円、106万円、130万円といった境界線を超えることで、所得税の発生や社会保険料の負担が生じ、結果として「働いたのに手取りが減る」という逆転現象が起きています。

これが特にパートタイム労働者などの就労抑制を招き、深刻な人手不足の一因にもなっています。給付付き税額控除は、この断絶した壁を「なだらかなスロープ」に変える有効な処方箋です。

具体的には、社会保険料の負担が生じる所得層に対して、同程度の額を税額控除の枠組みから給付として補填することで、手取りの逆転を防ぎます。さらに、住民税非課税世帯のみを対象とした今のスポット的な給付金制度を廃止し、所得に応じて段階的に給付を減らす仕組みに一本化することで、就労を妨げるインセンティブの歪みを解消できます。

これを実現するには、所得税だけでなく住民税や社会保険料の計算を統合した、極めて緻密な計算アルゴリズム*10の構築が求められます。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*10 アルゴリズム:問題を解決するための計算手順や処理方法のこと。税制においては、複雑な所得データから最適な控除額や給付額を算出するための計算ロジックを指す。

マイナンバーを活用した所得把握と資産制限の論点

公平な給付への絶対条件であるマイナンバーによる正確な資産・所得把握の重要性

制度の公平性を担保するための最大のインフラは、間違いなくマイナンバー制度です。

給付付き税額控除を正確に運用するには、給与所得だけでなく、自営業者の事業所得、さらには株の配当や利子といった資産所得までを「名寄せ*11して把握する必要があります。

現在、日本では預貯金口座とマイナンバーの紐付けが進められていますが、これが完了しなければ、「所得は低いが多額の資産を持つ」といった層にまで給付が行われるリスクがあります。

資産制限を設けるべきか、それとも事務コストを優先してフローの所得だけで判断すべきか。

これは2026年現在の日本でも非常に激しい議論の的となっています。マイナンバーカードの利用範囲を広げることへの国民的な理解を深めつつ、一方でプライバシー保護と利便性のバランスをどう取るか。

このインフラ整備の成否こそが、日本版RTCが「公平な制度」として定着できるかどうかの試等石となるでしょう。

⚠️ CAUTION:情報の正確性正確な所得把握にはマイナンバーの活用が不可欠ですが、資産情報の紐付け等については議論が続いています。最新の政府方針を常に確認する必要があります。
■ 脚注解説:より深い理解のために
*11 名寄せ:別々の機関やデータベースに登録されている同一人物の情報を、氏名や番号などをキーにして一つにまとめる作業。税制では所得や資産の正確な合算に不可欠。

不正受給を防ぐための行政コストと執行機関の選定

アメリカの事例でも見た通り、制度が複雑になればなるほど「申告漏れ」「不正」のリスクが高まります。

日本は諸外国と比較しても税制や社会保障の窓口が縦割りであり、国税庁(所得税)、地方自治体(住民税)、年金事務所(社会保険)などが別々に動いています。これを一つの「給付付き税額控除」という窓口に集約するのは、行政組織の大改革を意味します。

どの官庁が主導権を握るのか、あるいはデジタル庁がハブとなって全データを統合管理するのか。行政コストを抑えつつ、正確な支給を担保する体制づくりが急務です。また、悪意のある多重受給や虚偽申告をAI等でいかに検知するかといった、テクノロジー側の防衛策も重要になります。

申請主義を脱し、国が所得を把握して自動で振り込む「プッシュ型*12の構築が、結果として最も行政コストを下げ、不正を防ぐ道になるという見方が強まっています。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*12 プッシュ型:行政側が対象者を特定して、申請を待たずに行政サービスや給付を提供する方式。国民の手間を省き、支援の漏れを防ぐ効果がある。

恒久的な財源確保に向けた既存控除の整理と再編

既存控除の廃止と財源の再分配を通じた抜本的な税制改革のロードマップ

最も深刻なのは財源の問題です。例えば「一人4万円」の給付付き税額控除を全国民に適用した場合、単純計算で約5兆円の予算が必要となります。これをどこから持ってくるのか。

2026年現在の議論では、既存の「配偶者控除」「扶養控除」などの所得控除を段階的に廃止し、それを財源としてRTCへ転換するという案が有力視されています。これは「所得から引く」よりも「税額から直接引く、あるいは給付する」方が低所得者に有利だからです。

しかし、所得控除の廃止は、中・高所得層にとっては実質的な「増税」になる可能性もあります。国民全体でどのように負担と給付のバランスを再構築するのか、政治的なリーダーシップが問われる場面です。また、軽減税率の廃止とセットにすることで、さらに数兆円規模の財源を生み出すという構想もあります。

これは単なる一部の修正ではなく、戦後の日本が築いてきた税制を根本から作り直す、文字通りの「税制革命」なのです。

財源問題に関する一般的な目安

財源確保の手段 見込まれる財源規模(目安) 主な内容
既存の所得控除の整理 約2〜3兆円 配偶者控除や扶養控除を給付型へ転換
軽減税率制度の廃止 約1兆円 消費税率の一本化と低所得者還付
行政事務の効率化 数千億円 プッシュ型給付による事務コスト削減
(出典:財務省『税制に関する諸外国比較資料』)

公平性と簡素化を両立するプッシュ型給付の実現

申請不要のプッシュ型給付実現と行政コストの最小化および簡素化のメリット

日本の給付付き税額控除が目すべき理想の姿は、徹底した「簡素化」「プッシュ型」の融合です。

受給者が煩雑な申請書類を書く必要はなく、あらかじめ登録されたマイナンバーと公金受取口座に基づき、税務当局が計算した金額が自動的に振り込まれる。これこそが、行政コストを最小化し、本当に支援が必要な人を確実に救う方法です。

そのためには、所得情報のデータ連携をミリ秒単位で行えるような「ガバメント・クラウド*13の安定稼働が欠かせません。また、制度をシンプルに保つことも重要です。扶養家族の定義や対象所得の種類を細かくしすぎると、かえって不公平感や誤配を生みます。

2026年以降、日本がデジタル先進国として、いかに「スマートな税制」を構築できるか。公平性を求めすぎて複雑快奇な制度にならないよう、思い切った簡略化への合意形成が必要です。

■ 脚注解説:より深い理解のために
*13 ガバメント・クラウド:政府が共通で利用するクラウド計算基盤。各省庁や自治体のシステムを統合・連携させることで、行政サービスの効率化や迅速化を実現する土台となる。

よくある質問(FAQ)

Q給付付き税額控除は、生活保護と何が違うのですか?
ANSWER最大の差異は「就労インセンティブ」の設計です。生活保護は収入増に伴い給付が急激に削減されるため、労働意欲を削ぐ側面(貧困の罠)がありました。RTCは所得増に応じて給付を「緩やかに」減らす、あるいは最初は増やす設計のため、働くほど確実に手取りが増える構造になっています。
Qマイナンバーを登録しないと、この給付は受けられないのでしょうか?
ANSWER公平な運用のため、2026年現在の議論ではマイナンバーを通じた所得把握が前提となっています。未登録の場合、所得確認に膨大な時間がかかる、あるいは「プッシュ型」の自動給付が受けられず、自身で複雑な証明書類を揃えて申請しなければならないリスクがあります。
Q年収が高い世帯にとっては、単なる「増税」になりませんか?
ANSWER財源として既存の所得控除を整理する場合、高所得層の税負担は増える可能性があります。しかし、社会全体の「年収の壁」が解消されて人手不足が緩和し、経済が活性化することは、長期的に見れば高所得層にとっても市場環境の安定や公的扶助コストの抑制という形で恩恵となります。
Q消費税の軽減税率がなくなると、家計への負担が心配です。
ANSWER軽減税率は高所得者ほど金額ベースの恩恵が大きいという矛盾があります。これを廃止し、捻出した財源をRTCとして低所得層へ直接現金で「プッシュ給付」すれば、物価高に苦しむ世帯へより集中的かつ効果的に支援を届けることが可能になります。
Qアメリカのように「不正受給」が日本でも多発しませんか?
ANSWERアメリカの不正は主に「自己申告」と「複雑すぎる定義」が原因です。日本は韓国のようにITインフラ(マイナンバー)を活用し、当局が所得を自動捕捉した上で計算・支給する形を目指しています。人為的な申告プロセスを減らすことが、最大の不正防止策となります。
Q資産(貯金など)が多いのに所得が低い場合でも給付されますか?
ANSWERこれは2026年現在、最も議論されている論点の一つです。公平性を期すために「資産制限」を設けるべきという声も強いですが、そのためには預貯金口座のマイナンバー紐付けを完全に機能させ、当局が資産を捕捉できる体制を整えることが条件となります。
Q導入された場合、私たちはどのような手続きが必要になりますか?
ANSWER理想とされるのは、マイナンバーと公金受取口座を紐付けておくことで、確定申告等のデータを基に自動で振り込まれる「申請不要(プッシュ型)」の形式です。制度開始までにマイナポータル等で口座情報の確認と同意を済ませておくことが、唯一の準備となるでしょう。
Q日本での具体的な導入スケジュールはどうなっていますか?
ANSWER2026年度中の骨子決定に向けた議論が佳境を迎えています。システム構築とマイナンバーの普及状況を鑑み、2027年度以降に子育て世帯等の優先度の高い層から段階的に導入、あるいは税制抜本改革の一環として一斉導入される案が有力視されています。

給付付き税額控除の導入国が示す日本への教訓

国家のOSをアップデートしデジタルと税制の融合が拓く未来のビジョン

最後に、世界各国の事例を受けて結論をまとめます。

給付付き税額控除は、単なる現金のバラマキではありません。それは、国民の「就労意欲を高める」仕組みであり、社会全体のデジタル化を加速させ、複雑化した「年収の壁」を根本から打破するための、いわば「国家のOSをアップデートする構造改革」なのです。

アメリカ、イギリス、韓国、カナダ――。各国が培ってきたエッセンスは、2026年現在の日本が歩むべき道を照らす重要なヒントに満ちています。

💡 POINT:制度の本質

「働くほど損をする社会」からの脱却

給付付き税額控除の真の価値は、手取りの逆転現象を防ぎ、誰もが安心して労働市場に参加できる「なだらかなスロープ」を構築することにあります。

導入国の教訓 日本が目指すべき姿 成功の鍵(2026年視点)
アメリカ・韓国型 正確な所得把握 マイナンバーと全口座の紐付け
イギリス型 複雑な給付の統合 デジタル庁主導のシステム一元化
カナダ・独型 公平な負担と還付 消費税逆進性対策としての活用

私たちが支払う税金がどのように還元され、社会をどう変えていくのか。この制度が正しく機能すれば、働くことへの不安が減り、本当の意味での「手取り増」「生活の安心」が手に入るはずです。

一人ひとりが関心を持ち続け、建設的な議論を重ねることが、この革新的な税制を日本に根付かせるための、最も重要で不可欠なステップとなります。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

本記事は2026年2月現在の公的資料および報道に基づき、給付付き税額控除の動向を整理したものです。実際の制度導入時期や給付要件、財源確保に伴う既存控除の改廃については、今後の国会審議や閣議決定により大幅に変更されるリスクがあります。具体的な税負担の変動や受給資格の有無については、必ず財務省やデジタル庁の公式サイト等、最新の一次情報を確認し、必要に応じて税理士等の専門家にご相談ください。

CONCLUSION
■ 本記事のまとめ
RTCは減税と現金給付を組み合わせた所得移転の仕組みである
米国や英国は就労を促すワークフェアの思想で制度を運用している
韓国は高度なITインフラで正確かつ迅速な給付を実現している
日本での導入は年収の壁を解消するなだらかなスロープになる
マイナンバーによる所得捕捉と資産制限の議論が公平性の鍵を握る
既存の所得控除の整理や軽減税率の廃止が大きな財源候補となる
申請不要のプッシュ型給付こそが次世代の社会保障の理想像である
制度導入は国家のOSをアップデートする構造改革そのものである

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