2026年1月12日、地球深部探査船のちきゅうが南鳥島へ向けて出航したというニュースを見て、レアアースがどこで取れるのか改めて気になった方も多いのではないでしょうか。
私たちの生活を支えるレアアースは、今や最先端技術に不可欠なだけでなく、他国を牽制するための強力な外交カードとしても利用されています。
こうした中、日本の排他的経済水域に眠る海底泥の開発は、まさに資源の自給自足を実現するための切り札として大きな期待を集めています。
この記事では、今の私たちが知っておくべき情報を丁寧に紐解いていきます。
- Point世界シェアの現状と中国依存のリスクを整理
- Point南鳥島プロジェクトの最新進捗と技術的課題
- Point採掘現場が抱える環境負荷と倫理的なトレードオフ
- Point都市鉱山や代替技術による多角的な解決策の展望
- ✓経済安保と日本の資源自給に関心がある
- ✓ハイテク産業の供給網リスクを知りたい
- ✓南鳥島の深海採掘プロジェクトが気になる
レアアースはどこで取れる:世界の産出国と供給網
私たちが普段手にしているスマートフォンや、街を走る電気自動車。その心臓部を支えるレアアースが一体どこの国で、どのような背景を持って採掘されているのか。
世界経済の動向と密接に関わるその供給網の現在地を詳しく紐解いていきたいと思います。
特定の国への依存がもたらすリスクは、今や一企業の悩みを超え、国家レベルの安全保障の問題として日々ニュースを賑わせています。
そもそもレアアースとは?種類と用途

「レアアース」という言葉はよく聞きますが、具体的にどんなものかをご存知でしょうか。
簡単に言うと、金や銀のように誰もが知る金属ではありませんが、「これがないと最新の機械が動かない」という非常に重要な17種類の元素のグループを指します。
全部で17個もあると覚えるのが大変そうですが、実は私たちの暮らしに深く関わっているのはそのうちの数種類だけ。これらはわずかな量を加えるだけで製品の性能を劇的に高めるため、「産業のビタミン」という素敵な名前で呼ばれることもあります。
私たちが毎日使っているスマートフォンやパソコン、そして電気自動車(EV)など、ハイテク機器の心臓部には必ずと言っていいほどこのレアアースが隠れています。
大きく分けると、比較的手に入りやすい「軽希土類*1」と、名前の通りさらに希少で手に入りにくい「重希土類*2」の2つに分類されます。
特に最近は、電気自動車のモーターを力強く動かすための「最強の磁石」を作るのに欠かせない存在として、世界中で奪い合いのような状態が続いているのです。
| 主な種類 | どんなところで使われる? | 分類 |
|---|---|---|
| ネオジム | EVのモーター、ハードディスクなどの超強力な磁石 | 軽希土類 |
| ジスプロシウム | 磁石が熱で弱くなるのを防ぐための「魔法の粉」 | 重希土類 |
| ランタン | カメラの高級レンズ、ハイブリッド車の電池など | 軽希土類 |
| セリウム | スマホ画面のガラスを磨く研磨剤、排ガスの浄化など | 軽希土類 |
例えば、ネオジムで作られた磁石は、普通の磁石の何倍も力が強いため、製品を小さく・軽く・パワフルにすることができます。しかし、ただ強いだけでなく、過酷な温度変化にも耐えられるようにするためには、ジスプロシウムのような重希土類を混ぜる必要があります。
この「特定の元素を少しだけ混ぜる」という技術こそが、日本の製造業の強みでもありました。しかし、その原料がどこで取れるのかという点に目を向けると、実は非常に偏った地域に依存しているという、少し怖い現実も見えてくるのです。
💡 POINT
レアアースの正体まとめ
- 全部で17種類: 互いによく似た性質を持つ金属のグループ
- 最強の磁石の素: EVやスマホを小さくパワフルにする源
- 熱に強くする: ジスプロシウムなどは、磁石の弱点を補う貴重な存在
- 暮らしの必需品: カメラ、電池、排ガス浄化など、あらゆる場所に隠れている
*2 重希土類:ジスプロシウム等の産出量が極めて少ない元素。EVモーターの耐熱磁石に不可欠な戦略物資であり、精錬を含めた特定国への依存が世界的な懸念材料。
供給構造の変遷と中国が独占的地位を築いた歴史的背景

「レアアースといえば中国」というイメージがありますが、実はかつてはそうではありませんでした。1980年代半ばまで、世界最大の供給源はアメリカのカリフォルニア州にあるマウンテンパス鉱山だったのです。
しかし、中国の鄧小平氏が掲げた「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」という戦略的スローガンのもと、国家規模の開発が加速しました。中国は豊富な埋蔵量に加え、当時の緩やかな環境規制と安価な労働力を武器に、価格競争で世界を圧倒し始めたのです。
この戦略は恐ろしいほどの効果を発揮しました。価格の下落によりアメリカなどの鉱山は次々と閉山に追い込まれ、気がつけば採掘だけでなく、分離・精製という非常に高度な技術を要する工程までもが中国に集約されてしまったのです。
2026年現在、採掘シェアこそ7割程度に下がっていますが、磁石の製造に直結する精製能力においては、依然として中国が9割近いシェアを握っています。これは単なる偶然ではなく、数十年にわたる国家戦略の果てに構築された、世界最強の独占体制と言えるでしょう。
私たちが「どこで取れるか」を気にしなければならないのは、この歴史的背景が現在の「資源の武器化*3」に直結しているからです。
レアアースの埋蔵量ランキングと主要産出国の最新動向
最新のUSGS(米国地質調査所)*4のデータや2025年の市場報告を確認すると、世界の埋蔵量と実際の生産量のギャップに驚かされます。
埋蔵量だけで見れば、実は中国以外にも多くの「眠れる資源」が存在しているのです。
| 国名 | 埋蔵量 (万トン) |
2024-25 生産動向 |
主要な特徴 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 4,400 | 27万トン (微増) |
精製技術・インフラが世界一 |
| ベトナム | 2,200 | 数百トン 程度 |
ポテンシャル最大、開発は停滞気味 |
| ブラジル | 2,100 | 微量 | 環境規制が厳しく本格稼働が課題 |
| 米国 | 190 | 4.5万トン (増加中) |
国策によるサプライチェーン復活 |
特にベトナムの埋蔵量は圧倒的ですが、精製に必要な高度なプラント建設や環境への配慮から、商用ベースでの大量生産には至っていません。一方でアメリカは、埋蔵量こそ中国の数十分の一ですが、国を挙げて生産量を引き上げています。
ランキングの数字だけでは見えない「実際に製品として供給できる力」こそが、今の世界経済を左右しているのです。(出典:USGS『Mineral Commodity Summaries 2025』)
中国の輸出規制リスクと軽希土類や重希土類の需給バランス

2026年1月、レアアースを巡る地政学リスクは最高潮に達しています。
昨日1月12日に報じられたニュースによれば、中国政府の新たな管理条例*5に基づき、一部の国有企業が対日輸出の新規契約を停止し始めたという驚きの展開がありました。
これは、中国がレアアースを単なる商品としてではなく、政治的な要求を通すための「外交カード*6」として完全に位置づけたことを意味しています。
中国政府による法的コントロールの強まりについては、こちらの記事「国防動員法と域外適用のリスク|隣人がスパイに?情報戦は既に展開中」で詳しくまとめています。
特に懸念されるのが、ジスプロシウムなどの重希土類です。軽希土類については、アメリカやオーストラリアの努力により脱中国の目処が立ちつつありますが、重希土類の精製は依然として中国の独占場だからです。
需給バランスが崩れると、価格の高騰だけでなく、製品の製造そのものがストップしてしまう恐れがあります。
私たちが「どこで取れるか」を真剣に考えなければならないのは、特定の蛇口を絞められるだけで、日本の屋台骨である自動車産業がマヒしかねないという切実な危機感があるからです。
⚠️ CAUTION
2026年現在のリスク要因
- 新規契約の停止: 中国国有企業による対日輸出制限の動き
- 軍民両用品の指定: レアアースそのものが規制対象品目に
- 精製工程のブラックボックス: 採掘地を変えても精製で中国を通るリスク
*6 外交カード:交渉相手から妥協を引き出すための交渉材料。圧倒的シェアを持つ資源や市場アクセス権などが、国際政治における実質的な「力」として機能し、交渉を有利に進める武器となる。
アメリカのマウンテンパス鉱山やオーストラリアの重要性
中国に対抗する西側諸国の砦として、最も期待されているのがアメリカのマウンテンパス鉱山(MP Materials社)です。
かつて環境問題で閉鎖された苦い経験を糧に、現在は最先端の環境対策を施した精製施設を国内に再構築しています。アメリカ国防総省も多額の資金援助を行っており、まさに国威を懸けたプロジェクトとなっています。
同様に、オーストラリアのライナス社(Lynas)も、日本にとって「生命線」と呼べる存在です。
同社は西オーストラリア州で採掘し、マレーシアで分離精製を行うルートを確立しており、中国を経由しない稀有なサプライチェーンを維持しています。(参照:JOGMEC『豪州ライナス社への供給安定化支援について』)
最近では「フレンド・ショアリング*7」という言葉も一般的になりました。価値観を共有する友好国間で資源供給網を完結させる動きです。
日本政府もJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)*8を通じてライナス社への融資を継続しており、オーストラリアとの連携はかつてないほど強固になっています。
それでも、重希土類に関してはまだ自給自足には程遠いのが実情です。海外鉱山への投資を続けつつ、同時に「自前の資源」を探す必要性が、かつてないほど高まっています。
*8 JOGMEC:エネルギー・金属鉱物資源の安定供給を担う政府系機関。開発資金の出資や技術支援、備蓄の管理を通じ、日本の経済安全保障を物資供給の側面から強力に下支えする組織。
ミャンマーやベトナムに眠る資源の現状と地政学リスク
近年、中国が表向きの生産量を抑える一方で、その裏側で供給源として活用しているのがミャンマーです。特に重希土類を含むイオン吸着鉱の採掘が盛んですが、その現場は不透明極まりないものです。
中国国境に近いミャンマー北部のカチン州*9では、中国資本による開発が進んでいますが、環境破壊や強制労働、武装勢力への資金流入といった人権問題が絶えず指摘されています。
私たちが使う製品の原料が、こうした紛争の火種や環境汚染と引き換えに得られているのだとしたら、それは決して無視できない倫理的な問題です。
一方で、ベトナムは「脱中国」の最有力候補として注目されています。しかし、開発は思うように進んでいません。地質学的には有望なレアアース泥や鉱床が確認されているものの、分離精製に必要な高度な化学プラントを建設するには冒大な初期投資が必要であり、またベトナム国内の法規制の不透明さが投資の壁となっています。
日本の商社やエンジニアリング企業も強い関心を示していますが、現地のインフラ整備や政治的安定性を慎重に見極めている段階です。
資源確保には、地質的な調査だけでなく、こうした複雑な国際情勢や倫理観の整理も欠かせないのです。地政学リスク*10の管理が、現代の資源調達における最優先事項となっています。
*10 地政学リスク:特定の地域の政治・軍事・社会的な対立が、世界経済や供給網に悪影響を及ぼす不確実性。資源依存が政治的な圧力に使われるなど、地理的条件が経営リスクに直結する概念。
陸上採掘に伴う環境破壊や放射性物質への懸念と対策
レアアースの採掘には、常に「不都合な真実」が伴います。
陸上のレアアース鉱床の多くは、放射性物質であるトリウムやウランを微量に含んでいます。これらをレアアースから分離する工程で、大量の酸や有害な化学薬品が使用され、放射性廃棄物を含む泥水が発生します。
過去には中国やマレーシアで、不適切な処理による深刻な土壌汚染や住民の健康被害が報告されており、これこそが「レアアース採掘=汚いビジネス」という悪評を広める原因となりました。
また、中国南部で行われている「インシチュリーチング【in-situ leaching】(地中浸出法)」という手法は、地中に直接薬液を流し込んでレアアースを溶かし出すという、非常に効率的ですが環境負荷の凄まじい方法です。
これにより地下水が汚染され、かつての豊かな山々が不毛の地と化してしまった例も少なくありません。こうした背景もあり、現代の資源開発には「ESG(環境・社会・ガバナンス)*11」への厳格な対応が求められています。
安ければ良いという時代は終わり、どこで取れるか以上に「どのように取れたか」というトレーサビリティ(追跡可能性)*12が、企業の存続を左右するようになっています。
⚠️ CAUTION
環境負荷に関する留意点
- 放射性物質の管理: トリウム、ウランの適切な分離と保管の義務
- 廃液処理コスト: 環境基準を満たすための浄化設備には巨額の費用が必要
- 社会的責任: 汚染を引き起こした原料の使用は世界的な批判の対象に
*12 トレーサビリティ:原材料の調達から流通までを追跡できる状態。不当な環境破壊や人権侵害を伴う「紛争鉱物」を排除するため、最終製品のメーカーに厳格な証明が求められるようになっている。
日本のレアアースはどこで取れる?南鳥島プロジェクト
世界中の国々が資源の奪い合いを繰り広げる中、日本が打ち出したのは「深海」という驚くべき選択肢でした。
2026年1月12日、ニュースで見た方も多いと思いますが、清水港から「ちきゅう」が旅立ったその瞬間は、日本のエネルギー政策における歴史的なターニングポイントになるかもしれません。
私自身、自国の海にこれほどのポテンシャルがあることに感動すら覚えています。
南鳥島沖の深海採掘に向けた探査船ちきゅうの試験航海

2026年1月12日、地球深部探査船「ちきゅう」が南鳥島周辺の海域を目指して出航しました。
このプロジェクトの目的は、水深6,000メートルの海底に広がる「レアアース泥」の試験採掘です。(出典:海洋研究開発機構(JAMSTEC)『南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の実施について』)
南鳥島は日本の最東端に位置する孤島ですが、その周囲に広がる広大な排他的経済水域(EEZ)*13こそが、日本にとってのフロンティアです。
これまでの研究により、この海域には世界需要の数百年分に相当するレアアース、特に中国への依存度が高い重希土類が超高濃度で眠っていることが確認されています。
今回の試験は、内閣府が主導する「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)*14」の一環として行われており、まさにオールジャパン体制*15で挑む国家プロジェクトなのです。
*14 SIP(戦略的イノベーション創造プログラム):内閣府主導の国家プロジェクト。府省の枠を超え、産学官連携で社会的に不可欠な革新的技術の研究開発から実用化までを加速させる仕組み。
*15 オールジャパン体制:政府、研究機関、民間企業が垣根を超えて協力し、国家的な課題解決に挑む総力戦の構図。高度な技術集約が必要な深海開発において不可欠な協力枠組み。
水深6000メートルからの揚泥技術と実用化への課題

水深6,000メートルという環境は、想像を絶する過酷な世界です。水圧は約600気圧に達し、あらゆる機械にとって過酷な条件となります。ここでレアアース泥を吸い上げるのは、エベレストの頂上から地上に向けて吊り下げた長いストローで、目当ての粉を吸い取るような難しさがあります。
今回の試験で鍵となるのは、全長6,000メートルにも及ぶ「ライザー管」と、泥を吸い上げるための「エアリフト方式*16」の組み合わせです。
具体的には、パイプの中に空気を送り込み、その気泡が上昇する際の浮力を利用して泥を一緒に引き上げます。泥は非常に粘り気が強いため、途中で詰まらせないための流体制御技術も極めて重要です。
また、船上で引き上げた大量の泥からレアアースを濃縮する「ハイドロサイクロン*17」という遠心分離技術も投入されており、不要な泥をその場で戻すことで輸送効率を最大化する工夫がなされています。
これらの技術は世界に類を見ない最先端の海洋工学*18であり、その実現にはまだ多くのトライ&エラーが必要とされるでしょう。
*17 ハイドロサイクロン:遠心力を利用して粒子を大きさと重さで分ける分離装置。船上でのレアアース濃縮に不可欠な技術であり、不要な泥を減らすことで輸送効率を劇的に高める。
*18 海洋工学:海洋の開発や保全のための技術体系。土木、造船、環境計測などが融合した分野で、南鳥島のような超深海での作業を実現するための基盤となる学問・技術。
採掘コストの経済性と経済安全保障における戦略的価値

深海採掘において常に議論の的となるのが「採算性」です。
陸上で露天掘りをする中国のコストに比べれば、数千万円という日当がかかる「ちきゅう」での作業はあまりに割高に見えます。
しかし、2026年現在の国際情勢を考えれば、これは単なる損得勘定の話ではないと私は確信しています。
冒頭で触れた通り、中国が対日輸出を制限し始めている現状では、国産資源を持つことは、他国からの理不尽な要求を跳ね除けるための抑止力*19としての価値があります。
これを「経済安全保障の保険料」と考えれば、多少のコスト高は十分に許容範囲内と言えるのではないでしょうか。
現在、政府は2030年代の本格的な商業化を目指していますが、これが未来の日本を守る賢明な投資になるのか、私たちは主権者としてその進捗を厳しく見守り続ける必要があります。
💡 POINT
経済安全保障としての価値
- 供給途絶への備え: 特定国による輸出停止に対する唯一の対抗手段
- 価格交渉力の向上: 自前資源の存在が、輸入価格の安定に寄与する
- 新産業の創出: 海洋資源開発の技術そのものが輸出可能な資産になる
深海採掘が海洋生態系に与える影響と環境負荷の評価

資源確保という大義名分の一方で、絶対に忘れてはならないのが「深海環境への影響」です。
深海は地球上で最も調査が進んでいないエリアの一つであり、そこには数千万年という長い時間をかけて築かれた繊細な生態系が存在しています。
採掘機が海底を走り回り、泥を吸い上げることで発生する「堆積物プルーム(泥の雲)」は、深海の静寂を乱し、そこに住む生物たちの生息域を奪ってしまう危険性があります。
今回の南鳥島プロジェクトでは、環境への配慮が最優先事項の一つとなっています。
採掘中および採掘後、海底に設置されたセンサーや水中ドローン、そして環境DNA解析技術*20を駆使して、生物多様性にどのような変化が起きているかをリアルタイムで監視する計画です。
開発と保護。この永遠の課題に対し、科学的なデータに基づいた真摯な回答を提示できるかが、国際社会から信頼を得るための試金石となるでしょう。
都市鉱山やリサイクルによる国内資源循環のポテンシャル

「掘る」だけが資源確保の手段ではありません。私たちの身の回りにある、役目を終えた製品。そこに眠る「都市鉱山」を活用することこそ、最も環境負荷が低く、持続可能な方法です。
2026年1月、産業技術総合研究所*21などの主導で、都市鉱山から効率的にレアアースを回収するための新施設が稼働し始めました。特にハイブリッド車やエアコンのコンプレッサーからネオジム磁石を自動で抽出し、化学的にレアアースを分離する技術は、世界トップレベルにあります。
しかし、都市鉱山には致命的な弱点があります。それは「集めるのが大変」だということです。
現在、小型家電の回収率は20%程度に留まっており、リサイクルを真の供給源にするためには、私たち消費者の意識改革と、自治体・メーカー・リサイクル業者が一体となったスムーズな資源循環*22システムの構築が不可欠です。
「どこで取れるか」の答えの一つは、実は私たちの引き出しの中にあるのかもしれません。資源を単なる「消費」から「循環」へと変えていく努力が私たちにも求められています。
💡 MEMO
リサイクルに関する参考データ
日本の都市鉱山には、推計で約30万トンのレアアースが眠っているとされています。これは国内年間消費量の数十年分に相当する莫大な量です。※詳細は各自治体のリサイクル指針をご確認ください。
- 回収効率: 小型家電の回収ルートの周知と利便性の向上が必要
- コストの壁: バージン材(新品)を輸入する方が現状では安いことが多い
- 技術革新: 磁石を壊さずにそのまま再利用する「リユース技術」も進展中
*22 資源循環:廃棄物を再び資源として利用し、天然資源の投入と廃棄を最小限に抑える仕組み。輸入依存を減らし、持続可能な供給網を維持するための核心的戦略。
よくある質問(FAQ)
自給を目指すレアアースがどこで取れるか:今後の展望

ここまで、世界と日本のレアアースを巡る最前線を見てきました。
レアアースがどこで取れるかという問いに対する現在の答えは、
「中国という依存先から脱却し、世界中に供給網を広げつつ、自国(日本)の深海という最後のフロンティアに手を伸ばしている」
という極めてダイナミックな状況にあります。
今後の展望を左右する3つの重要ポイント
- 試験結果の判明: 2026年1月12日に出航した「ちきゅう」の揚泥試験の結果は数ヶ月以内に明らかになり、日本の資源自給の可否を占う試金石となります。
- 実用化へのロードマップ: 試験が成功すれば、2027年の大規模実証を経て、2030年代の本格的な運用・商業化が一気に現実味を帯びてきます。
- 資源大国への転換: 日本は今、「資源のない国」から「知恵と技術で資源を創り出す国」へと、歴史的な転換点に立っています。
一方で、安易な開発による自然破壊や、国際的な摩擦への不安も拭えません。
大切なのは、特定の情報に踊らされることなく、今回お話ししたような歴史的背景、技術的課題、環境への影響という多角的な視点を持ち続けることだと私は思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
【免責事項・記事のご利用にあたって】
本記事は2026年1月時点の公開情報や報道に基づき、ニュース解説を目的に作成されたものです。掲載内容は執筆時点の地政学情勢や市場環境を反映しており、将来の予測やプロジェクトの成功を保証するものではありません。
特にレアアース市場や資源開発分野への投資には、急激な価格変動や供給網の途絶といった特有のリスクが伴います。本記事は特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではなく、最終的な意思決定は専門家へ相談の上、読者様ご自身の責任において行ってください。正確な一次情報については、経済産業省やJOGMECの公式サイトを必ずご確認ください。
- ✓レアアースはEV磁石に不可欠な産業のビタミン。
- ✓中国が精錬の9割を握る現状は経済安保のリスク。
- ✓南鳥島沖には世界需要数百年の超巨大資源が眠る。
- ✓深海採掘は2030年代の本格商業化を目指す国家事業。
- ✓環境DNA解析等で海洋生態系保護との両立を追求。
- ✓都市鉱山リサイクルは国内資源循環の重要な鍵。

