ニュースを見ていると、北方領土問題がなかなか解決しない現状に、もどかしさを感じることがありますよね。
日本にとっては紛れもない固有の領土ですが、ロシアが頑なに返還を拒み続ける背景には、私たちが想像する以上に重層的な理由があるようです 。
ネット上でも、「そもそも北方領土をなぜ欲しいのか」という疑問をはじめ、面積やミサイル配備の実態に高い関心が寄せられています。
軍事、資源、歴史的要因を深掘りし、その複雑な「理由」の輪郭を浮き彫りにしていきましょう。
北方領土をなぜ欲しいのか:軍事と資源の価値
私たちが「北方領土」と聞いて思い浮かべるのは、地図の端にある小さな島々かもしれません。しかし、ロシアの視点に立ってみると、そこは国家の安全保障と経済的な繁栄を支える「代替不可能な資産」に見えているようです。
なぜそれほどまでに価値があるのか、まずはその物理的な規模と、ロシアが国家の命運をかけて構築している軍事的な役割から深掘りしていきましょう。
四島の名称と千葉県に匹敵する面積規模

北方領土は、択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島の四島から構成されています。
まず私たちが認識をアップデートしなければならないのは、その「圧倒的な大きさ」です。四島を合わせた総面積は約5,003平方キロメートルに及びます。この数字だけではピンとこないかもしれませんが、実は日本の千葉県や福岡県とほぼ同じ面積なのです。一つの県が丸ごと存在するような広大な土地が、そこには広がっています。
特に最大の島である択捉島は、それ単体で鳥取県に近い面積(約3,167平方キロメートル)を誇ります。これだけの広さがあれば、単なる監視所だけでなく、大規模な軍事基地、空港、都市インフラ*1、および産業拠点*2を展開することが十分に可能です。
ロシア側からすれば、これほど巨大な国土を譲り渡すことは、自国の「資産」を根こそぎ失うことに等しいと考えられています。ロシアはこの広大な土地を「クリル諸島」の一部として行政区分*3に組み込み、着々と開発を進めています。
この物理的な存在感こそが、ロシアが「欲しい」というより「手放せない」と考える第一の要因なのです。
*2 産業拠点:特定の産業が集中し、生産や物流の中核となる地域。北方領土では水産加工や資源採掘がその役割を担っている。
*3 行政区分:国が統治のために領土を分けた地域単位。ロシアは北方領土を「サハリン州」の一部として自国の制度下に置いている。
第二次世界大戦から現在に至る領土問題の歴史的経緯
北方領土をめぐる対立の根源は、1945年の第二次世界大戦末期にまで遡ります。
当時、ソ連(現在のロシア)は日ソ中立条約*4を破棄して対日参戦し、日本の降伏後に北方四島を占領しました。日本側は「不法占拠された固有の領土の返還」を求めていますが、ロシア側の歴史認識は正反対です。
彼らにとって北方領土は、第二次世界大戦という「大祖国戦争」において、甚大な犠牲を払って勝ち取った「正当な戦利品」であり、戦後秩序*5の正当な結果なのです。
1956年に署名された「日ソ共同宣言」では、平和条約*6締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことが明記されました。しかし、冷戦の激化や日米安全保障条約の改定などの影響で、交渉は停滞し続けました。
現在でもロシアは「当時の合意は善意による譲渡案であり、領土権を認めたものではない」という強硬な姿勢を強めています。
特に2022年以降の日露関係の冷え込みにより、平和条約交渉そのものがロシア側によって中断されており、歴史的な経緯をどう解釈するかという点において、両国の溝はかつてないほど深まっています。
この条約が結ばれた背景やその後の外交的影響については、こちらの記事『サンフランシスコ平和条約のメリットとデメリット|日本独立と領土問題』で詳しくまとめています。
*5 戦後秩序:第二次世界大戦後の国際社会におけるパワーバランスやルールの枠組み。ロシアは北方領土領有をこの正当な結果と主張。
*6 平和条約:戦争状態を正式に終結させ、国交を安定させるための合意。日露間では領土問題が障害となり、2026年現在も未締結。
北方領土の面積の比較をわかりやすく解説
「なぜ北方領土にこだわるのか」を考える際、その面積を日本の身近な島と比較すると、その価値がより鮮明になります。
以下の表を見ると、北方領土がいかに「規格外」のサイズであるかが分かります。択捉島だけでも沖縄本島の2.5倍以上の広さがあり、そこには膨大な森林資源*7、平坦な建設用地、および戦略的配置*8が可能な空間が存在します。
ロシアにとって、これらの島々を失うことは、単に地図上の線を動かすことではなく、これほど広大な「居住可能な国土」を明け渡すことを意味するのです。このスケール感こそが交渉の難しさの根底にあります。
| 島名 | 面積(目安) | 日本国内の比較対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 択捉島 | 3,167 km² | 鳥取県(3,507 km²) | 日本最大の島(本土除く)。空港や都市機能が充実。 |
| 国後島 | 1,489 km² | 沖縄本島(1,207 km²) | 沖縄本島よりも巨大。行政の中心地として機能。 |
| 色丹島 | 253 km² | 石垣島(222 km²) | 良港があり、水産加工業の拠点となっている。 |
| 歯舞群島 | 95 km² | 伊豆大島(91 km²) | 多くの小島からなる。北海道に最も近い最前線。 |
私たちが旅行先としてイメージする「沖縄本島」よりも、国後島の方が大きいというのは驚きですよね。正確な最新の面積データは国土地理院の公式サイト等で確認できますが、この面積があるからこそ、ロシアは大規模な「クリル社会経済発展計画」を推し進めることができているのです。
土地の広さはそのまま、そこから生まれる経済的ポテンシャルの大きさに直結しています。こうした開発による実効支配*9の強化は、返還交渉をより困難なものにしています。
*8 戦略的配置:軍事や物流において有利な地点に施設を置くこと。四島の広さは大規模な部隊展開や拠点構築を可能にする空間となる。
*9 実効支配:ある地域を実際に統治・管理している状態。ロシアは北方領土に住民を定住させ、自国の法律を適用して支配を固めている。
核抑止を支えるオホーツク海要塞化の地政学的価値

ロシアが北方領土に固執する最大の軍事的理由は、オホーツク海を「聖域」とする「バスティオン(要塞)戦略」にあります。
ロシア海軍にとって、オホーツク海は戦略原子力潜水艦(SSBN)*11を潜ませるための安全な内海です。これらの潜水艦は核ミサイルを搭載しており、もし自国が先制核攻撃を受けても、海中から確実に報復攻撃を行うセカンド・ストライク能力*12を担っています。
つまり、ロシアという国家の生存を支える核抑止*10力なのです。この「要塞」を完璧なものにするためには、外海である太平洋からの侵入を防ぐ「蓋」が必要です。千島列島はその蓋の役割を果たしており、特に南端にある北方領土の国後水道などは、冬でも凍りにくく、大型潜水艦が隠密に航行できる貴重なルートです。
もし北方領土が日本に返還され、そこに日米の監視網やソナーが敷設されれば、ロシアの潜水艦は一挙一動を把握され、核抑止力が無力化されてしまいます。ロシアの軍参謀から見れば、北方領土の返還は「自国の核兵器の首根っこを敵に差し出す」ような自殺行為に映っているのです。
こうした潜水艦が持つ戦略的な力については、こちらの記事『原子力潜水艦のメリット徹底解説!海を支配する「究極の力」の正体』で詳しくまとめています。地政学的な「鍵」を握っているからこそ、ロシアはこの海域の支配を絶対に緩めようとはしません。
*11 戦略原子力潜水艦(SSBN):核ミサイルを搭載した原子力潜水艦。海中に潜伏するため捕捉が難しく、最強の核報復手段とされる。
*12 セカンド・ストライク能力:敵の先制核攻撃を耐え抜き、その後に核報復を行う能力。これが維持されることで、相互確証破壊が成立する。
北方領土へミサイル配備が行われる理由

近年、北方領土で地対艦ミサイル「バスティオン」や「バル」の配備が加速しています。なぜこれほどまでに軍事化を進めるのか。それは、ロシアが西側諸国(特にアメリカ)に対して、「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」の壁を築いているからです。
配備されているミサイルは射程が数百キロに及び、北海道全域だけでなく、太平洋側の広範な海域を射程に収めています。これによりロシアは、有事の際にアメリカの空母打撃群がオホーツク海に近づくことを物理的に阻止できます。
現在の緊張した国際情勢下では、ロシアは極東における軍事的プレゼンス*13を誇示し、自国の東側の守りを鉄壁にする必要があります。北方領土を「不沈空母」のように要塞化することで、ロシアは太平洋への出口を確保しつつ、敵対勢力を寄せ付けない防衛ライン*14を維持しているのです。
この軍事的な「盾」としての機能がある限り、ロシアが自発的に島を手放すシナリオは極めて描きにくいのが現実です。最新の極東における軍事バランスや動向については、防衛白書などの公式資料を参考としてください。
*14 防衛ライン:自国を守るために設定された防衛上の境界線。北方領土はロシアにとってオホーツク海という「内庭」を守る最前線となる。
択捉島の火山に眠る希少資源レニウムの戦略的価値

軍事的な理由に隠れがちですが、実は北方領土には世界を驚かせる「資源」が眠っています。それが択捉島のクドリアビ火山から採取されるレアメタル「レニウム」です。
レニウムは世界で最も希少な金属の一つで、融点が極めて高いため、戦闘機や民間のジェットエンジンのタービンブレード、およびミサイルの部品に不可欠な耐熱合金の原料となります。いわば、航空宇宙産業の生命線とも言える戦略物資*15です。
通常、レニウムは他の鉱石の副産物として微量にしか採れませんが、択捉島の火山では高温の火山ガスの中に高濃度で含まれており、世界でも類を見ないほど効率的に採取できる可能性があるとされています。
ロシアは現在、欧米からの制裁を受けて自国の軍事・ハイテク産業を自前で支える必要に迫られています。このような戦略的に重要な資源を自国内で独占できることは、単なる経済的利益を超え、国家の「資源安全保障」に直結します。
この「宝の山」を手放すことは、ロシアの将来の産業競争力*16を手放すことと同義なのです。なお、日本周辺の海底資源事情やレアメタルの重要性については、こちらの記事『レアアースはどこで取れる?日本の深海に眠る宝の山と中国依存の正体』で詳しくまとめています。
資源の有無は、現代の国家戦略を左右する決定的な要因となっているのですね。
*16 産業競争力:自国の産業が国際市場で他国よりも優位に立つ能力。独自資源の確保は、他国に依存しない製造基盤の維持に直結する。
豊かな水産資源を支える排他的経済水域の重要性

島の周囲に広がる海は、世界でも有数の豊かな漁場です。
寒流と暖流がぶつかり合うこの海域は、サケ、マス、カニ、ウニ、コンブ、スケトウダラなどの宝庫です。ロシアにとって極東地域の水産業は主要な産業の一つであり、北方領土周辺での漁獲高はその大きな割合を占めています。
領土を所有しているということは、そこから200海里(約370km)にわたる排他的経済水域*17(EEZ)の権利を持つことを意味します。もし島を返還すれば、ロシアはこの広大な海の支配権を失い、漁業権だけでなく、将来的な海底エネルギー資源へのアクセス権も失うことになります。
現在もロシア人漁師たちはこの豊かな海で生活の糧を得ており、国ぐるみのインフラ整備によって加工工場なども近代化されています。経済的な「ドル箱」を失うことは、極東ロシアの地方経済*18の衰退を招くため、ロシア政府にとっては非常に大きな痛手となるのです。
この水産資源とEEZの維持も、ロシアが北方領土を「欲しい」と言い続ける強力な動機となっています。資源管理や境界線に関する公式な見解は、内閣府の北方領土関連ページなどで確認できます。
*18 地方経済:特定の地域内での生産、消費、雇用の仕組み。ロシア極東にとって北方領土周辺の漁業は、地域を支える基幹産業となっている。
北方領土をなぜ欲しいのか:憲法改正と国民感情
これまでは軍事や資源といった「実利」の話をしてきましたが、ロシアが北方領土を返さない理由は、それだけではありません。
むしろ、ロシアという国家の「形」や「国民のプライド」といった、目に見えない心理的・政治的な要因が、解決をいっそう困難にしています。
ここからは、ロシア国内で何が起きているのか、その内情を詳しく見ていきましょう。
領土放棄を禁じたロシアの憲法改正とプーチン政権

2020年に行われた「ロシアの憲法改正*19」は、領土問題の解決を法的に「不可能」なレベルまで追い込みました。
新憲法には領土の割譲*20に向けた行為や呼びかけを禁止する条項が追加されたのです。これにより、たとえ大統領であっても、北方領土の返還を議論すること自体が「違憲行為」と見なされ、法的に訴追されるリスクを生み出しました。
プーチン大統領にとって、北方領土を維持することは「強いロシア」を支持する国民への約束でもあります。
過去にソ連が崩壊した際の混乱と屈辱を知る世代にとって、領土を他国に譲り渡すことは「国家の衰退」そのものに見えます。2026年現在、プーチン政権は愛国心を煽ることで政権の求心力*21を維持しており、領土返還という選択肢は、政権にとって政治的な自殺行為に等しいと言わざるを得ません。
法律と政治の両面で「返還」のドアは幾重にもロックされているのが、今のロシアの現状です。国家の最高法規を書き換えてまで領土を守る姿勢は、日本との交渉において極めて大きな壁となっています。
*20 割譲:条約に基づき、自国の領土の一部を他国に譲り渡すこと。ロシアの新憲法では、この行為自体が原則として禁止されている。
*21 求心力:人々を引きつけ、組織を一つにまとめる力。プーチン政権は「強い大国ロシア」の象徴として領土を維持し、支持を繋ぎ止めている。
サンフランシスコ平和条約の解釈をめぐる対立

外交の舞台では、1951年の「サンフランシスコ平和条約」の解釈をめぐって、今も激しい火花が散っています。
この条約で日本は「千島列島(Kurile Islands)」に対するすべての権利を放棄しましたが、日本側は「北方四島は日本固有の領土であり、放棄した千島列島には含まれない」という、いわゆる固有の領土論に基づく外交的主張を展開しています。
対してロシア側は「北方四島は地理的に千島列島の一部であり、日本は条約ですでに放棄したはずだ」と主張し、真っ向から対立しています。
この解釈のズレは、70年以上経っても埋まることがありません。さらに、条約には「放棄した領土がどこに帰属するか」が明記されていなかったという法的な「隙」があります。ロシアはこの隙を突き、実効支配を既成事実化*23することで、自国の領有権*22の正当性を国際社会にアピールし続けています。
お互いに譲れない法的論理を持っているからこそ、外交官たちの話し合いだけでは解決できない、非常に難解なパズルとなってしまっているのです。最新の外交方針*24の詳細は、外務省の公式サイトなどで公開されています。
*23 既成事実化:ある状態を長期間続けることで、それを当然の事実として定着させること。ロシアは定住や投資を通じて支配を正当化している。
*24 外交方針:国が他国との関係を築く際の基本的な考え方。領土問題においては、歴史認識や法的解釈に基づく国益の確保が最優先される。
北方領土の返還によるメリットがロシアに乏しい現状
かつては「島を返せば日本から多額の経済協力や投資が引き出せる」という「経済カード」が有効だった時期もありました。しかし現在のロシアにとって、日本との経済協力の魅力は相対的に低下しています。
ウクライナ侵攻後の制裁*26合戦により、ロシアは日本を「非友好国*25」に指定し、多くの日本企業もロシア市場から撤退しました。その結果、ロシアは経済の軸足を急速に「中国やインド」へと移しており、日本の投資を必要とする度合いが薄れているのです。
つまり、日本に島を返して関係を改善したとしても、それによって得られる経済的な見返りは、現在のロシアにとって「島を手放す軍事・政治的リスク」を上回るものではなくなってしまいました。島を返さない方が国内を団結させられ軍事的にも有利という状況が、今のロシアにとっては最も合理的な選択肢になっています。
この「経済的メリットの不在」こそが、交渉を完全に停滞させている冷徹な現実です。かつて期待された「ウィン・ウィン」のシナリオは、現在の国際秩序*27の中では描きにくくなっています。
こうした中国との経済圏の広がりについては、こちらの記事『一帯一路と日本への影響|失敗説の裏側と中国が狙う不可視の支配』で詳しくまとめています。
*26 制裁:ルール違反等に対し、経済的・政治的制限をかける罰則。2022年以降、日本を含む西側諸国はロシアに厳しい経済制裁を実施中。
*27 国際秩序:世界各国の対立や協力によって保たれる国際社会のバランス。現在は大国間の対立が深まり、従来の枠組みが大きく揺らいでいる。
現地のロシア人が島から出て行かない生活環境の実態

北方領土には現在、「約1万8千人」のロシア人住民が暮らしています。
彼らにとってそこは「占領地」ではなく、何世代にもわたって家族が暮らし、墓があり、思い出が詰まった「故郷」です。ソ連時代から数えて三世、四世という若者も多く、彼らは生まれた時からそこがロシアであることを疑いもしません。
ロシア政府は近年、大規模な予算を投じて、島々のインフラを劇的に改善しました。「アスファルトの道路」、「最新の学校や病院」、「高速インターネット」、さらには水産加工工場などの職場も整備されています。
給与水準も本土より高く設定されており、生活の質はかつてに比べて大幅に向上しています。世論調査*28でも、多くの住民が「返還には絶対反対」という意思を示しています。
自分たちの街を自分たちで守るという意識が強まっており、現地住民の生活基盤がここまで固まっている以上、彼らを無理やり立ち退かせるような解決策は、人道的*29にも政治的にも現実味を欠いています。
*29 人道的:人間としての権利や尊厳を重んじる考え方。長年住む住民を強制的に立ち退かせることは、現代の国際社会で大きな論点となる。
戦勝の記憶と国民感情が領土返還を拒む心理的要因

最後に、ロシア国民の心の奥底にある「感情」の部分を無視することはできません。
ロシアにおいて、第二次世界大戦の勝利は、2700万人以上の尊い犠牲を払って勝ち取った「神聖な記憶」です。北方領土はその勝利の結晶の一つと見なされています。
ロシア人にとって、この領土を日本に譲ることは、単なる土地の譲渡ではなく、自国の歴史や、大国としての尊厳を守るための最後の一線を否定することに他なりません。
このようなナショナリズム*30は、メディアや教育を通じて現在も強化され続けています。軍事パレードや愛国教育の場では、北方領土がロシアの一部であることが強調され、「一歩も引かない」姿勢が美徳とされます。
国民の多くが「たとえ経済が苦しくなっても領土だけは売らない」という強い誇りを持っている以上、政治家が返還を切り出すことは国内世論的に不可能です。国家としてのアイデンティティ*31を懸けた問題となっているのです。
*31 アイデンティティ:自分が自分であることの証明や、集団の自己同一性。北方領土領有は、戦勝国ロシアという自己認識の一部となっている。
よくある質問(FAQ)
Qなぜロシアは「2島返還」ではなく、4島すべてを保持し続けるのですか?
Qウクライナ侵攻はこの領土問題にどのような影響を与えましたか?
Q島に住んでいるロシア人は、日本領になったら追い出されると思っているのですか?
Q択捉島の「レニウム」は日本でも活用できる資源ですか?
Q北方領土の返還が実現する可能性は、今後ありますか?
【総括】ロシアは北方領土をなぜ欲しいか

この記事を通じて、ロシアが北方領土をなぜ欲しいのかという問いに対する「答え」の輪郭が見えてきたでしょうか。
それは単なる「意地悪」や「土地への欲望」ではなく、軍事・経済・政治のすべてが密接に関わる、ロシアという国家の生存戦略そのものを反映した冷徹な論理なのです。
ロシアにとっての北方領土とは
「欲しい」という欲望の対象ではなく、国家の安全と大国としてのプライドを守るために「絶対に失うことができない」不可欠な臓器のような存在です。
2026年現在、北方領土をめぐる情勢はかつてないほど厳しい局面にあります。ロシアがこれほどまでに執着し、返還を拒む理由は以下の3つの柱に集約されます。
- 軍事の要石:核抑止力を維持するための「オホーツク海要塞化」に欠かせない物理的な蓋の役割。
- 経済的な国富:希少資源「レニウム」や世界屈指の漁場など、将来の国益を担保する「資源の宝庫」。
- 不退転の国内事情:憲法による領土割譲の禁止と、戦勝の記憶に基づく強固な国民感情の壁。
日本が「固有の領土」と主張し続けることは正当ですが、相手側の論理と執着の深さを知ることは、今後の外交や未来を考える上で避けては通れないステップです。感情論だけでは見えない、国際政治の厳しい現実を直視しなければなりません。
私たち一人ひとりがこの問題の「今」を正しく認識し、冷静な視点を持ち続けること。本質を見極めようとする姿勢こそが、解決への小さな、しかし確実な一歩になると私は信じています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
本記事は2026年1月現在の公開情報を基に構成されています。北方領土を巡る地政学的リスクや軍事配備状況、および国際法上の解釈は極めて流動的であり、情報の正確性を永続的に保証するものではありません。情勢の変化により、記述内容と実情が異なる可能性があるため、最終的な判断にあたっては外務省等の公的機関が発信する最新の一次情報を必ずご確認ください。
■ 本記事のまとめ

